旅をする犬

以前、書評に載っていた本をご紹介。50年代のイタリアにいた犬の話で、タイトルは犬の名前をとって『ランポ』(ペットライフ社)。その犬は、イタリアのある町の駅に突然やってきます。本を書いたのは、その駅員のバルレッターニという人なのですが、彼はその雑種犬にランポと名付け可愛がります。ところがランポには、特殊な能力があったのです。

ランポは、何日か駅に滞在すると、ふらりと列車に飛び乗って出かけ、また戻ってくるのです。そのうち「ランポをミラノで見た」「フィレンツエで見た」という話が届くようになり、彼が鉄道を使ってイタリアじゅうを旅していることがわかります。エルビオは、この図抜けて頭のいい犬を自分の家で飼おうと連れ帰るのですが、ランポにとって家庭は居心地のよいものではないらしく、再び放浪の旅に出ては駅に舞い戻り、つかの間の安息の場であるエルビオの机の下で眠るのでした。

話の山場は、鉄道の規約からランポを駅に置くことは好ましくないと判断した駅長が、彼を梱包して遠くの駅に送り出すという事件です。エルビオは泣く泣くランポを箱につめ長距離列車に乗せますが、何カ月かしたある日、彼は幽霊のようにやせ衰えた姿で駅に戻ってきます。そしてお決まりの感動!「ランポ、ランポ!もう絶対におまえを離さないぞ」 とエルビオは号泣します。さすがの駅長も納得してしまうのでした。

ランポのような話は希有なコトではないようです。アメリカ大陸を歩いて横断したボビーという犬や、鉄道郵便車に乗ってアラスカにまで行ったオウニーという犬などが知られていますが、日本では名犬ラッシーが一番有名でしょうけど、あれはフィクション。ちなみに、セター種は帰巣本能が薄い風来坊なのでこういう話には縁がないワケ。