躾教室 その11

具体的な叱り方
◇天罰方式
無駄吠えなどに対しては、いわゆる天罰方式で大きな音のする物を犬に気付かれないように投げつけ、「吠えていると空から嫌なものが降ってくる」と思わせます。犬に向かって投げるのではなく、上から落ちてくるように(できれば犬のすぐ向こう側とか真後ろに)投げる方がよいです。放してやっている時に不都合なことをした時や号令に従わなかった時にもこの手が使えます。数個の硬貨を入れた缶など地面に落ちた時に大きな音の出るものが効果的ですが、とっさの時には何でも構いません。ポケットの中の硬貨でもウンチ拾い用のスコップでも手元にあるものを何でも活用して下さい。
無駄吠えなどに対してはびっくりして声が止まればそれで良く、飼い主は知らぬ振りをしていた方が良いと思います。何度か繰り返せば行為と嫌なことが結びつき、自然にその行動が減って行くはずです。(実際、ワタシにはかなりの効果があり、いまでも、間違って鳴ると、あのときの恐怖がよみがえるワケ)
放れていて号令を無視している時などは,悟られないように何気なく放り投げ、投げた物が地面に落ちる寸前に「いけない」「こら」などと叱責の声をかけます。叱られた直後に近くに何かが降ってくるので、「放れていても飼い主の手の平の中にいる」という認識ができます。びっくりして振り向いた瞬間に再度号令をかけて従わせます。

◇別の行動に置き換える
悪意がなく悪ふざけをするような場合(飛びつき、じゃれ噛み、マウンティングなど)、飛びついたら後足を踏む、噛んだらマズルをつかんで叱る、などと書かれた本がありますが、中途半端な仕打ちだと、格闘ごっこの相手をしてくれたと思ってなおさらじゃれ噛みがエスカレートしてしまうものです。犬自身には相手を傷つける意図がなくても、人間の薄い皮膚ではかなり深い傷になることがあります。かと言って、ふざけかかるたびに抵抗できないほど強く押さえつけて叱るのは、自立性の高い犬では心理的な傷害を作るもとになってしまいます。
指示によく反応する犬(ワタシ、ワタシ)に対しては、禁止して行動を抑制するだけではなく、命令を出して別の行動に置き換えさせ、従ったらほめてやる、という方が結果が良いようです。何をしてはいけないか(何をすると叱られるのか)という禁止事項だけを教えるよりも、何をすれば良いのか(何をすればほめられるのか)という対案をセットで示してやる方が受け入れやすいものです。
 じゃれて噛んできたら「痛いっ!」と大げさに痛がって見せ、「だめ」で禁止、「なめて」などと言って手をなめさせる。(普段,手をなめてくるときに「なめて」などと言って言葉を覚えさせておく) 飛びつこうとしたらすかさず言葉で叱り、「おすわり」で足元に座らせて撫でてやる、という具合です。どのような行動に置き換えるかはそれぞれのお宅で工夫すれば良いと思いますが、遠ざけるような命令ではなく、接触欲求を満たしてやるような命令を考えてください。
 狩猟欲のある犬は,子犬の時にはかならず格闘ごっこをして遊ぶものです。時にはじゃれっこの相手をしてやることも必要だと思います。ただし,遊びの始めと終わりのタイミングは飼い主が決めて、じゃれて良い時といけない時の区別をはっきりさせることが大切です。じゃれっこをする時に噛みつかせるおもちゃ(タオルや軍手などでも良い)をひとつに決めておくのも良いと思います。(私の場合、「ハイ、おしまい!」と号令がかかります)